「週刊少年ジャンプ 30号」(2010年6月28日発売)の「ぬら板」に掲載された対談の完全版をついに公開!
盛り上がりすぎて、本誌掲載時には掲載しきれなかった秘話も完全収録! ※初回放送前に収録したものです。

『ぬらりひょんの孫』という作品には、おいしい材料がいっぱい揃っているんです。(西村監督)

――まず、椎橋先生はアニメ化が決まった際どんな感想を持たれましたか?
椎橋先生
実はずいぶん前から「アニメ化の話がきているらしいよ〜」と担当編集から聞いていたんです。
担当のニンジン作戦ですね(笑)。僕は「アニメになるかもしれない!」とそれを励みに
連載を頑張っていたんです。だから決まった際は「やっと辿り着いた!」という感覚でした。
本当にすごく嬉しかったです。

――西村監督とお会いするのは初めてですか?
椎橋先生
いえ今回で3回目です。僕もシナリオ会議に参加させていただいたりしているので。
西村監督
そうですね。それで僕が椎橋先生にお会いする時は『ぬらりひょんの孫』がいかに面白いか、という話を
ひたすら話すという(笑)。
椎橋先生
僕は西村監督のそういうお話を聞いてすごく嬉しかったです。

――西村監督は原作にどんな印象をお持ちですか?
西村監督
読んでいると誌面から「こういう風に読ませたい!」という椎橋先生の熱意が伝わってくるんですよ。
コマとコマの間から、そこにあったであろうシーンとかが僕は凄く感じ取れて。
そういう部分も含めて、凄く面白い作品だと思いました。

――とても好きなシーンがあると伺いましたが。
西村監督
ええ。そこは第1話の冒頭で「どうしてもやりたい!」と無理を言ってやらせてもらいました。
カナちゃんが気絶した雪女を介抱しているシーンなんですけど。



――原作第十四幕のあたりですね。
西村監督
あのシーンが原作の初期では一番好きです。
ガチガチの妖怪アクションと任侠モノというスタイルに、ああいった女の子同士のやりとりが
ポンと入っているのが良くて。
ここのシーンを見た時から、僕の中で作品の世界観がブワァァッと大きく広がった感じがしたんです。
椎橋先生
そういう風に感じていただけるなんて、僕も凄く嬉しいです。
西村監督
『ぬらりひょんの孫』という作品には、おいしい材料がいっぱい揃っているんです。
キャラクターもそうですし、シチュエーションも。
だから、ページの都合で先生が使えなかった材料をアニメに昇華できればいいなと思っています。

――『ぬら孫』は息抜きでちょっとしたキャラのやりとりなど、よく描かれてますよね?
椎橋先生
そうですね。特に単行本のカバーを外したところが多いかな。
僕はああいったキャラいじりが非常に好きなんです(笑)。
西村監督
僕はもちろんですが、単行本のカバーを外したところにある漫画は、
シナリオのライター陣も大好きで、アニメにガンガン入れ込んでいく予定です。
原作のディープなファンがほくそ笑むようなネタも拾っていると思いますよ。

アニメこそ、四国編完全版になると思っています(笑)。(椎橋先生)

――アニメは原作とは異なり、中学生編から始まるということですが、
オリジナル展開がかなり入るんですか?

西村監督
基本は原作に沿って忠実にやっていくつもりです。
ただ原作でやむなくカットされてしまったシーンなどを補完してアニメでやれればいいなと思っています。
原作を読んでいると、シチュエーション的にも設定的にも「もっとツッコんで描いたら面白いのに!」という場面が
結構あるんです。諸事情で先に進まざるをえない状況だったのだと思いますが、もったいないなと思って。
椎橋先生
そういう場面は結構ありますね。牛鬼編とか…
もっと時間をかけて描きたかったんですけど話が大人向け過ぎたんですよね(苦笑)。
西村監督
それを聞いて、だったらアニメで是非やらせて下さい!と言ったんです。
アニメでは牛鬼編が一番補完されていると思います。
梅若丸がいかにして先代のぬらりひょんの子分になったのかというあたり。
あそこを読んだ時に4、5ページで終わっていて「ここにはもっと話があったはず!」と思ったんです。

それで過去の話もじっくりやっています。脚本の高橋ナツコさんも同意見で、
オリジナルの妖怪や新しいエピソードを出すよりは、原作の隙間を補完する方向性でいこうということになりました。
ただ、四国編は少し構成を変えています。僕的にはもう少し犬鳳凰を活躍させたいと思って(笑)。
椎橋先生
それは僕からも是非お願いします!
河童のメインエピソードを始め、四国編ではやりたいことがいっぱいあったんですけど、
連載ではやりきれなかったんです(苦笑)。
だから、シナリオ会議で「四国編はこんなことをやりたかったんですけど…」というアイデアを
全部出させてもらいました。アニメこそ、四国編完全版になると思っています(笑)。

――アニメ化に対して、椎橋先生が出された要望は?
椎橋先生
先程も話に出ましたが、四国編の構成を変えて頂きたいとお願いしたことですね。
でもこれに関しては、僕と制作スタッフが偶然にも同じことを考えていたので、
要望を出さなくても良かったのかもしれません(笑)。
西村監督
打ち合わせでは僕が原作を読んで感じたことやアイデアを話させてもらったんですが、
それと先生の考えていたこととが近かったんですよね。「そうですよね!」って感じで。
椎橋先生
ええ。本当に僕のやりたいことと一緒だったんです。
「制作チームのみんなさんとイメージが一緒だ!」とすごく嬉しかったです。
互いの希望が合って非常に良かったなと思います。
あとは原作第1話の話をどこかでやって欲しいなと思っています。
西村監督
それはもちろん、やりますよ! 楽しみにしていて下さい。

『ぬらりひょんの孫』はトリプルヒロインですから(笑)。(西村監督)

――では椎橋先生はアニメで話が再構築されることに不安はないですか?
椎橋先生
それは全然ないです。僕はむしろ変えてもらうところがどうなるのか、
もう放送が楽しみでしょうがないです。
例えば原作であまり出てこないキャラクターを出していただけると「あっこういう人なんだ!」とわかったり(笑)。
特に若菜さん…あとカナちゃんも結構出していただけると聞いたので楽しみです。
西村監督
カナちゃんは大プッシュしてます。
でも最初は雪女がいち押しだったんです。「雪女をいっぱい活躍させよう!」と思っていたんですけど、
実は雪女って何もしなくても勝手に活躍してくれるキャラなんですよね。
キャラの幅も広くて、キャピキャピした女の子的な部分から、尚かつハードなアクションまでこなす。
彼女は自然と画面のいろんなところに出てくるんです。

一方、もう一人のヒロイン・ゆらは陰陽師として正義感が強く、物語の中で一番ヒーローっぽい。
ゆらも敵の前に立ちはだかり、術を出すことで見せ場が多々あるんです。
でも、カナちゃんは普通の人間で、バトルにはまず参加できない。
カナちゃんは見せ場という意味では、作品で一番厳しいところに立っているヒロインだと気が付いたんです。
それ以降、僕は各話の演出の人に「カナちゃんを引き立ててあげて下さい、頼みます」って
みんなに言ってるんです(笑)。カナちゃんが埋もれてしまうというのは作品的に絶対に良くない。
『ぬらりひょんの孫』はトリプルヒロインですから(笑)。

椎橋先生
そうですね。カナちゃんは大事です。リクオにとって、カナちゃんは唯一人間サイドのシンボルなんです。
だから僕も単行本でカバーを外したところの漫画で、カナちゃんの出番を繋いでますよ。
西村監督
あれは良いですよね。そうそう、カナちゃんには各話のサブタイトルも読んでもらっていますよ。
椎橋先生
そうなんですか!
西村監督
音響監督に「サブタイでもカナちゃんフィーチャーですか」って言われましたが(笑)。
椎橋先生
ありがたい。僕の方からもカナちゃんをよろしくお願いしますって感じです(笑)。

――EDはカナ、雪女、ゆらのユニット「片手☆SIZE」が歌うことになりました。
   これは単行本第4巻収録の4コマが元ネタなんですよね。


椎橋先生
ええ。締め切りに追われて描いた4コマネタがまさかアニメで採用されるとは!
あれは本当に一瞬で描いたやつなんです(笑)。
描いた当時は冗談で「CDデビューしたら笑えるね」って話をしていたんですけど、
まさか実現するとは思いませんでした。
西村監督
「片手☆SIZE」はどのように生まれたんですか?
椎橋先生
本当にその場のノリで(笑)。初夢モノで、3ヒロインを使って何かできないかなと考えて
パッと浮かんだものを描きました。
西村監督
「片手☆SIZE」という名前に意味はあるんですか?
椎橋先生
3人を表すことばをずっと考えていて、直感的に「片手☆SIZE」だなと。
意味はヒミツです。そこはこだわりで、今後も絶対言いません(笑)。

僕とアニメ制作チーム、そしてたぶん原作ファンの方たちも「アニメはこれがベストだ」と思えるすごく良い形に向かっている感じがします。(椎橋先生)

――構成以外に、椎橋先生がアニメで協力されている部分はありますか?
椎橋先生
キャラクターの身長設定(対比表)は僕がすべてラフ設定画を作ってお渡ししました。
実はこの時に初めてキャラの身長を真面目に考えました(笑)。
細かいところは決めていなかったので、「このキャラの身長はこれくらいだ!」と
ひとつひとつ身長設定を作っていったんです。
僕もキャラの正確な身長がわかって、設定作るには非常に良い機会になりました。
でも、対比表って難しいですよね。漫画で表現した時の対比をままでやると、
青田坊とか4メートルくらいになったりするから(笑)。
西村監督
漫画でもアニメでも演出上はそうしないとダメですよね。
でも、スタンダードなサイズは必要なので、先生にこちらからお願いさせていただきました。


――椎橋先生がアニメで楽しみにしているシーンはありますか?

椎橋先生
リクオの昼と夜の入れ替わりのシーンとかは、アニメで見るのを楽しみにしています。
そこに関しては、描いている時に映像のイメージがあったので余計ですね。
西村監督
作画スタッフは気合いが入っているので楽しみにしていて下さい。
WJの人気作品ですから当然ですけど、作画スタッフに『ぬらりひょんの孫』ファンが山のようにいるんです。
アニメ制作会社に「やらせて下さい!」と電話がかかってきて、集まってきてるんですよ。
椎橋先生
そうなんですか!それは凄くありがたい話ですね。
西村監督
そういう作画集団なので、凄く勢いがあって、僕はむしろ制御役です。
『ぬらりひょんの孫』ならではの絵が作りたいと、
今回は全体に墨がにじんでいるような雰囲気を出す絵など新しい技術に結構挑戦しています。
本作はそういった挑戦がたくさん詰まっていて、視聴者も楽しいと思いますよ。
椎橋先生
それは楽しみです。あと、劇中音楽が凄くカッコ良かったです。
あれは監督が何か指示されたんですか?
西村監督
音楽は田中公平さんにお任せです(笑)。
僕はイメージだけお伝えして、期待通り田中さんがアイデアをいろいろ盛り込み、
はじけてくれました。作品の魅力を引き出す音楽をこだわって作ってくれています。
椎橋先生
音楽、素晴らしかったです。とても気に入りました。

――最後にこれからアニメを観るファンへひと言ずつお願いします。
西村監督
原作を読まれているみなさんに「こんな風にアニメでふくらませてくれるなんて嬉しい!」と
思ってもらえる構成がベストだと思っています。
アニメを観た方が「この監督、『ぬら孫』が大好きなんだな」と思ってもらえるよう
随所に愛をにじませてありますので、放送を楽しみにしていて下さい。
椎橋先生
監督の愛は、僕にもすごく伝わってきます。僕はアニメ放送前の段階で、
監督と作品のイメージを共有できていることがすごく嬉しいです。
僕とアニメ制作チーム、そしてたぶん原作ファンの方たちも
「アニメはこれがベストだ」と思えるすごく良い形に向かっている感じがします。
普段はひとりで描いているのでわからなかったのですが、
アニメのスタッフ陣と話をして「もっとこうした方がいいんじゃないの?」と思う部分は
みんな意見が一緒で、なんだ僕と同じことを考えているんだ!と(笑)。
アニメは読者の期待に向かって突き進んでいると思うので、楽しみにしていただけたらと思います。

(C) 椎橋寛/集英社・奴良組


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